鍼灸コラム
夏の腰痛(前編)
だいぶ暑くなってきました。治療院は結構日当たりが
いいので、クーラーを入れて室温を下げないとムワーっ
とします。冬生まれのせいかどうにも暑いのは苦手です。
さて、季節によって悪くなる部位には結構偏りがある
もので、これから秋までは腰痛が増えていく時期となり
ます。
何となく腰痛は冬が多いような印象がありますが夏は腰痛
での来院が多いのです。
夏は高温多湿で自力での熱放散が追いつかないため薄着に
なって身体を冷まそうとします。といっても胴体部分の布の
面積を減らすのは倫理的に限界があります。
涼しいからと全裸で歩いて警察のご厄介になるのはご免です。
となると布を減らす場所は四肢(手足)がメインとなります。
四肢は胴体に比べるとかなり細いので大きな血管が浅いところ
にあります。それによって血液中の熱を空気中に効率よく放出
できるようになっています。
四肢で冷えた血液はゆっくりと胴体に戻りなから隣接する筋肉
などを冷却することで体温を下げるわけですが、冷えた筋肉は
当然のことながら硬くなります。冷蔵庫に入れたお肉は常温の
お肉より硬いのと同じことです。
さて、本題の腰に目を向けてみましょう。
脚から戻ってきた血液は骨盤内で合流し、腰を通って心臓に帰る
ので腰もそのときに冷えて硬くなります。
硬くなった腰の筋肉は充分な酸素や栄養を入手できず動きが悪く
なってしまう…腰痛の始まりです。
さらに脚には腰のツボが沢山あります。
古来からお灸のようにツボを暖める治療はあってもツボを冷やす
治療法はあまり聞いたことがありません。むしろ冷やすことは
悪いことと説く文献がほとんどです。
結論としては腰は勿論脚を冷やすことも腰痛の元です。
となるとどう見てもダメそうな服装は
・膝丈のズボン
・背中、腰が出るようなシャツ
・アキレス腱が出る靴下(裏に太い血管が通っています)
…こんな感じですか。梶が谷の駅前で捜せばいくらでも
捕まえられそうです。
また大昔と今で大きく違うのはクーラーの存在です。
かの楊貴妃は南国系の美女でしたが大変な汗っかき
だったそうで、普段住んでいる館は上から常時水を
かけて涼しくしていたそうです。しかしこういう例
外を除くと、我が国でもすら一般家庭に冷房が普及
したのはここ25年ほどのことです。クーラーがある
生活はまだまだ身体にとっては想定外の事態なのです。
しかし、クーラーの涼しい風で外の暑さを忘れている
ときちょっと困ったことが起きています。
ここで小学校の理科の時間を思い出すと
「暖かい空気は上の方へ 冷たい空気は下の方へ」
こんなことを教わった記憶があると思います。
部屋の中でもこれは例外ではありません。つまり
「敏感な頭がある場所より鈍感な足腰のある場所の方が遙かに寒い」
と言うことです。脳を守らなければいけない都合上、
頭の温度が高いことを本能は良しとしません。
脳が適度に冷える程度まで室温をさげたとき既に足腰は
冷え冷えになっている。
クーラーのかけすぎはこうして起こることが多いのです。
そういう目線で日常生活を見ると
・風呂から出てパンツ一丁でウロウロ
・背中にクーラーや扇風機の風を当てながらナイター観戦
・風呂上がりに涼しい部屋でメールしていたら何時間もたっていた
などなど身に覚えがある危険行為は色々あると思います。
クーラーをかけながらパンツ一丁で睡眠なんか言語道断です。
冷やすことが腰に危険なことは書き終わったので、
次はどうすればいいかですね。後編に続きます。
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